俺様御曹司と蜜恋契約
何だろう…?

とりあえず車から降りて電話に出よう。そう思ったのだけれど。

「出れば?」

葉山社長にそう言われてしまう。

「早く出ないと切れるぞ。ほら」

そう促されたので電話に出ることにした。

「もしもし」

『―――花か?』

「えっ?あ、うん。お父さん?」

それは父親からの電話だった。

それにしてもどうして公衆電話からかけてきているんだろう?父親は自分の携帯を持っているはずなのに。

『いいか、花。落ち着いて聞きなさい』

その声はどこか焦っているようで、いつもの穏やかな父親の喋り方とは少し違う。それに妙な胸騒ぎがした。

「どうしたの?」

『あのな…母さんが、母さんがな』

「お母さん?お母さんがどうかしたの?」

震える父親の声に、スマホを握る手に自然と力が入ってしまう。

『母さんが……倒れたんだ』

「――――えっ?」

『突然、家で倒れてそのまま動かなくて。救急車で運ばれた。今は、病院にいる』

電話の向こうで父親の小さくすすり泣く声が聞こえた。
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