俺様御曹司と蜜恋契約
ドクドクと心臓が打ち始めて、でも冷静にならないと、と言葉を出す。

「どこの病院?すぐに私も行くから」

それから父親から病院名を聞くと電話を切った。

ふっと全身から力が抜けて、スマホが手から滑り落ちる。

しばらくそのまま何も考えることができなかった。

お母さんが倒れた。
今朝は笑顔で送り出してくれたのに。
それなのにどうして突然……。

「――花?…おい、花」

葉山社長に肩をゆすられてハッと我に返る。

「お袋さんに何かあったのか?」

そうたずねられて思い出す。

「そうだ。病院、行かないと」

車を降りようとした私の手を葉山社長が引き留める。

「待て。どこの病院だ」

震える声で病院名を答えれば、葉山社長が両手でハンドルを握った。

「そこならここから近い。車で10分もあれば着く。俺も一緒に行くから乗っていけ」

「でも……」

葉山社長には急ぎの仕事があるはず。会社に戻らなくていいの?

するとそんな私に気が付いたのか、葉山社長が右手をそっと私の頭に乗せる。

「大丈夫だ。それよりも今はお前が心配だから」

私の頭を撫でると、葉山社長の手が再びハンドルを握った。


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