俺様御曹司と蜜恋契約

 「今の俺の1番は…」





「それで、これはどういうこと?」

腰に手をあて、いわゆる仁王立ちのポーズを取る私を両親が申し訳なさそうに見ている。

「お父さん。きちんと説明して」

怒ったようにそう言えば、父親は頭の後ろに手をあてながら「すまん」と小さく謝った。すると母親がそんな父親をかばうように口を開く。

「まぁまぁ花ちゃん。あんまりお父さんを責めないであげて。お父さんも気が動転していたのよ」

「お母さんは黙ってて」

白いシーツのベッドに上体を起こして座っている母親の右足にはギプスがされている。

「お父さんが紛らわしい言い方するから。私てっきりお母さんの一大事だと思ったのにただの骨折じゃない」

「骨折だって一大事だろ」

ポンと私の肩に手を乗せた葉山社長が一歩前に出て母親を心配そうに見つめる。

「足はまだ痛みますか?」

「痛みは今はないんだけど、でもしばらくは歩けそうにないわね」

「それは大変だ」

「ごめんなさいね。枝山さんにも心配かけてしまって」

「いえ、僕は構いません」

その言葉で思い出した。本当なら葉山社長は急いで会社に戻らないといけないはずだったのに、私のことを車で病院まで送ってくれたんだ。

「時間大丈夫ですか?」

そう声をかけると葉山社長は「大丈夫」と笑顔で返してくれた。

父親からの電話のあと私は葉山社長の車で慌てて病院に来た。倒れて病院に運ばれたという父親の言葉と緊迫した様子にてっきり命に関わる一大事だと思っていたのに。看護師さんに案内された部屋でベッドに座る母親とパイプイスに腰掛ける父親が笑い合って話をしている光景を見たときは体の力が一気に抜けて思わずその場に座り込んでしまった。

聞けば足首の骨折らしい。家の階段から足を滑らせて転げ落ちたとか…。

まったく人騒がせな親だ。

「すまん花。父さんがもっとよく説明すればよかったな」

「ごめんね花ちゃん。心配させちゃって」

そう言って小さく頭を下げる両親に私は軽くため息をつきつつも笑顔を向ける。

「でも大したことなくて本当に良かったよ」

階段から足を滑らせて転げ落ちて打ち所が悪かったらもっと大変なことになっていたかもしれない。足首の骨折だけですんで本当に良かった。もう還暦なんだから気を付けてもらわないと。

あらためてホッと胸を撫で下ろせば頭にポンと手が乗せられる。

「よかったな、花」

見上げれば葉山社長が優しく微笑んでくれていた。その笑顔に「はい」と大きく頷いた。

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