俺様御曹司と蜜恋契約



翌日から母親は足を動かす練習に入り、歩けるようになるには4週間ほどかかるとのことだった。その間もちろん食堂の仕事はできない。

母親のいない間、父親が1人で食堂の仕事をするのは厳しくて、かといってお店を閉めるわけにもいかない。ということで母親が復帰するまでの間は私が食堂の手伝いをすることになった。

とはいってもその間会社を休むわけにもいかないので私が手伝うのは夜の営業だけ。平日の昼間はお隣に住む陽太のお父さんとお母さんが手伝いをしてくれることになった。お店を陽太に譲ったのでだいぶ暇になってしまったらしくうちの食堂のピンチを助けてくれるそうだ。

私は普段よりも1時間ほど早く仕事を上がらせてもらっている。家の事情を説明したところ、穂高部長がそれをすぐに承諾してくれた。

『湯本くんは有給もあまり取っていないからそのくらいはいいよ』

と言ってくれたのだ。ありがたい。


そんな今日は食堂を手伝い始めて3日目になる。

「おっ!久しぶりだなぁ、花ちゃんの顔見るの」

まるで珍しいものでも発見したような目で私を見ているのは、商店街の近くの家に住んでいる常連客の島田さんだ。カウンター席に座ってから私の姿を見つけるとすぐに声を掛けてきた。

「島田さんお久しぶりです。元気そうですね」

「おうよ!おらぁ今年で77になるが健康診断でどこも異常がなかったんだ」

島田さんは若い頃に大工の仕事をしていて、商店街にあるお店の何件かは島田さんが建て替えをしている。大工時代の名残なのかいまだにがっちりとした体格をしている元気なおじいちゃんだ。
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