俺様御曹司と蜜恋契約



「あっ、花。ねぇねぇこれ見た?」

お昼休みが終わり自分のデスクに戻ると先にランチから戻っていた持田さんに声を掛けられた。その手には女性ファッション誌を持っていて、表紙のモデルはこの前葉山社長と一緒に行ったカフェの近くで撮影を行っていたアリサさんだ。真っ赤な唇の上に人差し指をあて、きれいなウインクをきめている。

「それがどうかしたんですか?」

「その反応…。やっぱり見ていないのね」

持田さんは私のデスクの上でファッション雑誌を広げだす。

仕事中なのにいいのかな?と慌てた私に気が付いたのか持田さんがちらりと穂高部長に視線を移す。

「大丈夫よ。部長ぜんぜん気付いてないから。………えっと何ページだったかな」

爪にきれいなマニキュアが塗られた持田さんの指がさらさらとページをめくっていく。やがて目的のページを見つけたのか「あった」と小さく声をあげた。

「ほら、これ見て」

そのページにはとてもよく知っている人物が写っていた。

「…………」

ネイビーのスーツをびしっと着こなし、高級そうな黒い革張りのオフィスチェアに足を組んで座り、肘掛に肘を置き軽く頬杖をついてカメラ目線をきめている葉山社長の写真が大きく掲載されている。

「どうして葉山社長が女性ファッション誌に載っているんですか!?」

驚いて持田さんを見れば、長くてほっそりとした人差し指でトントンと雑誌をたたいた。そこには大きく見出しが出ていて。

「密着!将来有望な若手イケメン社長!葉山グループ代表取締役社長、葉山光臣――ってこれ何ですか?」

経済誌なら分かるけれど女性ファッション誌でなぜか葉山社長が大々的に取り上げられている。

スーツ姿でデスクに向かい書類を読んでいる仕事中の葉山社長や、高級そうな大型犬を連れて公園を歩いているプライベートな葉山社長の様子などの写真がたくさん掲載されていて、その中にはなぜか上半身裸なものまである。その体は余計な脂肪が一切ついていなくてきゅっと引き締まっているいわゆる細マッチョ……って凝視している場合じゃない!
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