俺様御曹司と蜜恋契約
その声に葉山社長が振り向く。
けれどどこから名前を呼ばれたのか気付いていないのか、その視線がエントランス内をぐるりと一周している。
私はソファから勢いよく立ち上がると足を前に進めた。
一歩踏み出すたびにヒールがカツンカツンと良い音をたててエントランスに響く。周りの社員たちの視線を感じながらも私は一点だけを見つめて歩いた。
エレベーターの前でぴたりと止まる。
「俺を呼んだの、お前?」
ズボンのポケットに片手を突っ込んだ葉山社長がじっと私を見降ろしていた。
長めの黒髪から覗く二重の切れ長の目が鋭い印象を与えている。すっと通った鼻筋に薄い唇。
近くで見た彼の第一印象はクールな人で、声をかけて近付いたはいいものの続きの言葉が出てこない。なんとかして声を絞り出した。
「……葉山光臣社長ですよね」
「ああ」
しっかりとした低い声で返される。
遠くから見たときも思ったけど背がすごく高い。150センチの私よりもたぶん30センチは高いと思う。普通にしていると目線が彼の胸より下にいってしまうので、首を反らせて見上げるような形になってしまう。
眉一つ動かさない涼しげな顔で見下ろされて少し怯んでしまった。
「あ、あの。あなたにお話したいことがあります」
「話?」
「はい」
人と話すのにこんなに緊張したのはいつ振りだろう。心臓が今にも飛び出してしまうのではないかと思うほどのドキドキを、両手をギュッと握りしめることでなんとかこらえた。
「少しだけお時間をください」
震える声でそう言って私は葉山社長の切れ長の目をじっと見つめた。
けれどどこから名前を呼ばれたのか気付いていないのか、その視線がエントランス内をぐるりと一周している。
私はソファから勢いよく立ち上がると足を前に進めた。
一歩踏み出すたびにヒールがカツンカツンと良い音をたててエントランスに響く。周りの社員たちの視線を感じながらも私は一点だけを見つめて歩いた。
エレベーターの前でぴたりと止まる。
「俺を呼んだの、お前?」
ズボンのポケットに片手を突っ込んだ葉山社長がじっと私を見降ろしていた。
長めの黒髪から覗く二重の切れ長の目が鋭い印象を与えている。すっと通った鼻筋に薄い唇。
近くで見た彼の第一印象はクールな人で、声をかけて近付いたはいいものの続きの言葉が出てこない。なんとかして声を絞り出した。
「……葉山光臣社長ですよね」
「ああ」
しっかりとした低い声で返される。
遠くから見たときも思ったけど背がすごく高い。150センチの私よりもたぶん30センチは高いと思う。普通にしていると目線が彼の胸より下にいってしまうので、首を反らせて見上げるような形になってしまう。
眉一つ動かさない涼しげな顔で見下ろされて少し怯んでしまった。
「あ、あの。あなたにお話したいことがあります」
「話?」
「はい」
人と話すのにこんなに緊張したのはいつ振りだろう。心臓が今にも飛び出してしまうのではないかと思うほどのドキドキを、両手をギュッと握りしめることでなんとかこらえた。
「少しだけお時間をください」
震える声でそう言って私は葉山社長の切れ長の目をじっと見つめた。