俺様御曹司と蜜恋契約
「全部残さずに食ってたけど、本当は俺、母親の料理が大嫌いだった。雑誌やテレビでは評判高いあいつの料理だけどガキの頃の俺にとっては何を食ってもただマズく感じて。あの人の料理を美味しいと思ったことなんて1度もなかった」
そう言って、葉山社長は少し寂しそうに笑った。
「そしたらだんだんと他の料理も美味しく感じられなくなった。お金を払って食べる高級レストランの料理も」
その話を聞きながら前に葉山社長が私に言ってくれた言葉を思い出していた。
私が小さい頃に父親の作った親子丼をマズイと言った男の子がいたことを話したとき、葉山社長はその子のことを『病んでいた』と言っていた。どんなものを食べても美味しく思えない病気だったって。
もしかしたらその言葉は子供時代の葉山社長が自分で体験したことだったのかもしれない。だから、うちの親子丼をマズイと言った男の子と子供の頃の自分を重ねていたのかも。
人気料理研究家の葉山今日子が作った料理がマズイわけなんてない。でもマズいと感じてしまうのはきっと子供の頃の葉山社長が『何を食べても美味しと思えないビョーキ』だったから。
きっとそれは心と関係しているのかもしれない。
愛人の家にばかりいて自宅に戻ってこない父親と、そんな父親の分のご飯も毎晩必ず用意して帰りを待ち続けている母親。子供の頃の葉山社長はそんな両親を見ているのが辛かったんじゃないかな。だから、母親が父親のために作る料理を美味しいと感じることができなかった。そしてだんだんと母親が作った料理以外も美味しいと感じられなくなってしまったのかもしれない。
「もしも今お母様の料理を食べたら、葉山社長は美味しいって言えると思いますか?」
ふとそんな質問をしていた。
今の葉山社長が母親の手料理を食べたらどう思うのだろう。子供の頃と違って美味しいと思えるのだろうか。
だって葉山社長は私の作った料理をどれも美味しいと言って食べてくれる。父親の作った親子丼だって美味しいと言ってくれたし、さっき食べた田中のおばあちゃんのお団子だって美味しいと言って食べていた。だからもう葉山社長は『病気』じゃないと思う。食べたものを純粋に美味しいと感じられているから。
「どうだろうな…。もう一度、母親の料理が食べたくてももう死んじまってるから」
ぽつりと葉山社長が言葉をこぼした時。彼の着ているスーツの内ポケットでスマホが音を鳴らした。
「悪ぃ。電話でてもいい?」
「あ、はい、どうぞ」
私が頷いたのを見ると、葉山社長はすぐにスマホを取り出して耳に当てた。
そう言って、葉山社長は少し寂しそうに笑った。
「そしたらだんだんと他の料理も美味しく感じられなくなった。お金を払って食べる高級レストランの料理も」
その話を聞きながら前に葉山社長が私に言ってくれた言葉を思い出していた。
私が小さい頃に父親の作った親子丼をマズイと言った男の子がいたことを話したとき、葉山社長はその子のことを『病んでいた』と言っていた。どんなものを食べても美味しく思えない病気だったって。
もしかしたらその言葉は子供時代の葉山社長が自分で体験したことだったのかもしれない。だから、うちの親子丼をマズイと言った男の子と子供の頃の自分を重ねていたのかも。
人気料理研究家の葉山今日子が作った料理がマズイわけなんてない。でもマズいと感じてしまうのはきっと子供の頃の葉山社長が『何を食べても美味しと思えないビョーキ』だったから。
きっとそれは心と関係しているのかもしれない。
愛人の家にばかりいて自宅に戻ってこない父親と、そんな父親の分のご飯も毎晩必ず用意して帰りを待ち続けている母親。子供の頃の葉山社長はそんな両親を見ているのが辛かったんじゃないかな。だから、母親が父親のために作る料理を美味しいと感じることができなかった。そしてだんだんと母親が作った料理以外も美味しいと感じられなくなってしまったのかもしれない。
「もしも今お母様の料理を食べたら、葉山社長は美味しいって言えると思いますか?」
ふとそんな質問をしていた。
今の葉山社長が母親の手料理を食べたらどう思うのだろう。子供の頃と違って美味しいと思えるのだろうか。
だって葉山社長は私の作った料理をどれも美味しいと言って食べてくれる。父親の作った親子丼だって美味しいと言ってくれたし、さっき食べた田中のおばあちゃんのお団子だって美味しいと言って食べていた。だからもう葉山社長は『病気』じゃないと思う。食べたものを純粋に美味しいと感じられているから。
「どうだろうな…。もう一度、母親の料理が食べたくてももう死んじまってるから」
ぽつりと葉山社長が言葉をこぼした時。彼の着ているスーツの内ポケットでスマホが音を鳴らした。
「悪ぃ。電話でてもいい?」
「あ、はい、どうぞ」
私が頷いたのを見ると、葉山社長はすぐにスマホを取り出して耳に当てた。