俺様御曹司と蜜恋契約
真っ赤な唇の上に人差し指をあててきれいなウインクをきめているハーフモデルが表紙のそのファッション雑誌はとても見覚えがある。
一瞬でぞわぞわと背中に冷たいものが走った。
「このファッション誌、知美さんが毎月買って読んでいるの」
知美さんと言われて視線を向けたのは優子のお兄さんの奥さんだった。いつも身だしなみに気を付けてしっかりとした化粧におしゃれな服装の彼女はたしかにファッション誌を定期購読していそうな女性だ。久しぶりに会った知美さんにぺこりと頭を下げられたので私も軽く頭を下げて応えると優子が言葉を続ける。
「知美さんが読みかけのこの雑誌をリビングに置いたままにしていて。それをうちに遊びに来た陽太が何気なく手に取って中身を見ていたの。そうしたら知っている人が写っているって陽太が言うから…」
優子が開いたページには、びしっとしたスーツ姿でデスクに向かい書類に視線を落とす葉山社長の姿が大きく映し出されていた。
「この人ってこの前会った花の彼氏だよな?」
優子の隣に座っている陽太が私の横顔をじっと見つめる。
「花、私に話してくれたよね?再開発から森堂商店街を守るために葉山グループの社長と付き合うことになったって」
優子が心配そうな表情で私の顔を覗き込む。
「枝山ってのが葉山グループの社長だったんだな」
冷静な父親の声が聞こえて私は雑誌から顔を上げた。
「あの男、俺たちを騙してたんだな」
「違うのお父さん」
「何が違うんだ」
父親の怒号にしんと静まる食堂。
「だいたい花、お前もお前だ。優子ちゃんから話は全部聞いたぞ。葉山グループの社長のそんなくだらない取引に乗ったりして。しかもあの男、嘘の名前を使ってうちに上がり込んで花の彼氏面して俺たちを騙してどういうつもりだ」
「ごめんなさい…」
何も言い返すことができなかった。
たしかに葉山社長は両親のことを騙していた。そして私も一緒に。
嘘をついていることに後ろめたい気持ちはあったけれど、心のどこかではきっとこのまま知られなければ嘘をついていても大丈夫だという気持ちがあったのかもしれない。葉山社長との取引が終わってもう会うことがなくなったとき、両親や商店街のみんなには『枝山さん』とはもう別れたと彼の存在を消せばいいって…。
父親がこんなに怒っているのを見るのは初めてかもしれない。いつも口数が少なくて温和な性格の父親。穏やかな笑顔で優しく私に料理を教えてくれていた。そんな父親をこんなに怒らせてしまった。
一瞬でぞわぞわと背中に冷たいものが走った。
「このファッション誌、知美さんが毎月買って読んでいるの」
知美さんと言われて視線を向けたのは優子のお兄さんの奥さんだった。いつも身だしなみに気を付けてしっかりとした化粧におしゃれな服装の彼女はたしかにファッション誌を定期購読していそうな女性だ。久しぶりに会った知美さんにぺこりと頭を下げられたので私も軽く頭を下げて応えると優子が言葉を続ける。
「知美さんが読みかけのこの雑誌をリビングに置いたままにしていて。それをうちに遊びに来た陽太が何気なく手に取って中身を見ていたの。そうしたら知っている人が写っているって陽太が言うから…」
優子が開いたページには、びしっとしたスーツ姿でデスクに向かい書類に視線を落とす葉山社長の姿が大きく映し出されていた。
「この人ってこの前会った花の彼氏だよな?」
優子の隣に座っている陽太が私の横顔をじっと見つめる。
「花、私に話してくれたよね?再開発から森堂商店街を守るために葉山グループの社長と付き合うことになったって」
優子が心配そうな表情で私の顔を覗き込む。
「枝山ってのが葉山グループの社長だったんだな」
冷静な父親の声が聞こえて私は雑誌から顔を上げた。
「あの男、俺たちを騙してたんだな」
「違うのお父さん」
「何が違うんだ」
父親の怒号にしんと静まる食堂。
「だいたい花、お前もお前だ。優子ちゃんから話は全部聞いたぞ。葉山グループの社長のそんなくだらない取引に乗ったりして。しかもあの男、嘘の名前を使ってうちに上がり込んで花の彼氏面して俺たちを騙してどういうつもりだ」
「ごめんなさい…」
何も言い返すことができなかった。
たしかに葉山社長は両親のことを騙していた。そして私も一緒に。
嘘をついていることに後ろめたい気持ちはあったけれど、心のどこかではきっとこのまま知られなければ嘘をついていても大丈夫だという気持ちがあったのかもしれない。葉山社長との取引が終わってもう会うことがなくなったとき、両親や商店街のみんなには『枝山さん』とはもう別れたと彼の存在を消せばいいって…。
父親がこんなに怒っているのを見るのは初めてかもしれない。いつも口数が少なくて温和な性格の父親。穏やかな笑顔で優しく私に料理を教えてくれていた。そんな父親をこんなに怒らせてしまった。