俺様御曹司と蜜恋契約
「まぁ落ち着けたつ坊」

島田さんの冷静な声が怒りで震える父親をなだめようとしてくれている。

「きっと花ちゃんは商店街を守りたかっただけだ。お前たちを騙したかったわけじゃない」

「そうだよ辰夫。少し落ち着け」

すかさず笹野さんも幼馴染である父親に声を掛けた。

「花ちゃんはお前とみっちゃんに似て優しい子だ。俺たちの商店街をどうにかして再開発の手から救いたくて葉山グループの社長との取引に応じたんじゃないかな」

「だが自分の娘がそんなむちゃくちゃな取引をしていたのかと思うと、どうしても許せない」

笹野さんの言葉を聞いた父親が歯をくいしばりながら言った。

「そうよ花ちゃん。こんなやり方をされても嬉しくないのよ」

母親は苦しそうにそれでも何とか微笑もうと複雑な表情を浮かべて私を見つめる。

島田さんや笹野さんの言ったとおり。私は森堂商店街の再開発をやめてもらいたくて『俺の女になれ』という葉山社長とのむちゃくちゃな取引を受け入れてしまった。両親のため商店街のみんなのためと思っていたけれど、その取引のせいで両親を怒らせて悲しませて、商店街のみんなには心配をかけさせてしまった。

「ごめんなさい…」

頭をさげることしかできなかった。そんな私の背中をさすりながら優子が言う。

「でも花はもう葉山社長との取引はやめたんだよね」

「えっ」

私はハッとなって優子を見つめた。

取引をやめた？
ううん、やめてなんかいない。
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