俺様御曹司と蜜恋契約
葉山社長とはしばらく連絡もないし会ってはいないけれど、取引の終わりを告げられてはいない。だから私はこれからも葉山社長のマンションに料理を作りに行くし、取引はまだ継続中のはずなのに。

「花が葉山社長との取引をやめたから再開発の計画がまた始まったんじゃないの?」

「え………」

最初、優子が何を言っているのか分からなかった。再開発がまた始まったって?するとそんな優子の言葉を付け足すように父親が静かに口を開く。

「今日、葉山グループの副社長が商店街に来た。一度白紙に戻した森堂商店街の再開発計画を再開させるらしい」

「うそ……」

どういうこと?

とりやめになったはずの再開発が再び始まるなんて。

だって葉山社長は私が取引に応じたら森堂商店街の再開発から手を引いてくれると言った。その言葉通り再開発は白紙になったのに。数日前だって葉山社長は森堂商店街を絶対に守ってくれると言っていた………。

「あっ」

そこで気が付いた。

葉山社長が何から森堂商店街を守ろうとしてくれていたのか。

同じ葉山グループでも再開発を進めようとしているのは葉山社長じゃなくて副社長だ。そういえば葉山社長も前に言っていた。森堂商店街の再開発の担当は副社長である叔父さんだって。

守ると言ってくれた葉山社長の言葉。

もしかしたら副社長が再び森堂商店街の再開発を進めようとしているのを葉山社長は止めようとしてくれているのかもしれない。

私との取引があるから……?

「ごめん。用事思い出した」

イスから慌てて立ち上がると私は食堂を飛び出した。

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