俺様御曹司と蜜恋契約
そもそもどうして葉山社長はそこまでして森堂商店街の再開発に反対してくれるのだろう。
私との取引があるから?
でも私のそんなお願いをいつまでもこうして聞き入れてくれているなんて…。
「どうしてですか」
ふと口からそんな言葉が漏れていた。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?今回は『取引』じゃなくて『守る』と言ってくれている」
葉山社長にとっては森堂商店街を再開発から守るよりもそれを進める方が会社としてのメリットがあるはずだし、副社長である叔父さんと対立だってしなくてすむのに。そこまでして森堂商店街の再開発を止めようとする理由なんて葉山社長には何もないはずなのに。
「どうしてですか」
詰め寄ってそうたずねれば、葉山社長の顔がふっと優しく微笑んだ。
「あの商店街がなくなったら花が泣くだろ?」
「え…」
「お前の泣き顔、あの日からずっと忘れられなかった」
「あの日?」
いつのことだろう。そういえば前にも同じようなことを言われたけれど。
「あの日って私が初めて葉山社長に会って再開発をやめてほしいと言った日のことですか?」
それ以外思い当たらなかった。
すると葉山社長が真っ暗な空に向かって大きく息を吐き出した。
「半分正解で半分外れかな。たしかにお前と初めて会った日だけどその日のことじゃない」
そう呟いた葉山社長の手がそっと私の頬に添えられる。
「言ったろ?俺、お前の涙には弱いんだって。ガキの頃の俺の一言でお前を泣かせてからお前の泣き顔が忘れられなかった」
子供の頃?
一言?
私を泣かせた?
「それって……」
どういうことだろう。
はっきりと教えてほしい。私は覚えていないけれどどこかで葉山社長に会ったことがあるのかもしれない。
「――佐上」
葉山社長が声をあげ黒塗りの車の近くに立っている佐上さんを呼べば彼がすぐにこちらに駆けつけてくる。
「花のこと家まで送ってやって。森堂商店街だ。場所、分かるだろ?」
「かしこまりました」
葉山社長に頭を下げた佐上さんが私を振り返る。
「さぁ行きましょう」
そうして先に車へと歩き出した。
「じゃあな、花」
葉山社長は私の頭に手を乗せるとポンポンと軽くたたいた。それから私に背を向けてマンションのエントランスへと入っていく。
「待ってください。まだ話が……」
しかし葉山社長の姿はマンションの中へと消えてしまった。
私との取引があるから?
でも私のそんなお願いをいつまでもこうして聞き入れてくれているなんて…。
「どうしてですか」
ふと口からそんな言葉が漏れていた。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?今回は『取引』じゃなくて『守る』と言ってくれている」
葉山社長にとっては森堂商店街を再開発から守るよりもそれを進める方が会社としてのメリットがあるはずだし、副社長である叔父さんと対立だってしなくてすむのに。そこまでして森堂商店街の再開発を止めようとする理由なんて葉山社長には何もないはずなのに。
「どうしてですか」
詰め寄ってそうたずねれば、葉山社長の顔がふっと優しく微笑んだ。
「あの商店街がなくなったら花が泣くだろ?」
「え…」
「お前の泣き顔、あの日からずっと忘れられなかった」
「あの日?」
いつのことだろう。そういえば前にも同じようなことを言われたけれど。
「あの日って私が初めて葉山社長に会って再開発をやめてほしいと言った日のことですか?」
それ以外思い当たらなかった。
すると葉山社長が真っ暗な空に向かって大きく息を吐き出した。
「半分正解で半分外れかな。たしかにお前と初めて会った日だけどその日のことじゃない」
そう呟いた葉山社長の手がそっと私の頬に添えられる。
「言ったろ?俺、お前の涙には弱いんだって。ガキの頃の俺の一言でお前を泣かせてからお前の泣き顔が忘れられなかった」
子供の頃?
一言?
私を泣かせた?
「それって……」
どういうことだろう。
はっきりと教えてほしい。私は覚えていないけれどどこかで葉山社長に会ったことがあるのかもしれない。
「――佐上」
葉山社長が声をあげ黒塗りの車の近くに立っている佐上さんを呼べば彼がすぐにこちらに駆けつけてくる。
「花のこと家まで送ってやって。森堂商店街だ。場所、分かるだろ?」
「かしこまりました」
葉山社長に頭を下げた佐上さんが私を振り返る。
「さぁ行きましょう」
そうして先に車へと歩き出した。
「じゃあな、花」
葉山社長は私の頭に手を乗せるとポンポンと軽くたたいた。それから私に背を向けてマンションのエントランスへと入っていく。
「待ってください。まだ話が……」
しかし葉山社長の姿はマンションの中へと消えてしまった。