俺様御曹司と蜜恋契約

 「俺の女になれ」





「――それで?俺に話ってなに」

社長室のソファにどかりと腰を降ろした葉山社長が長い足を組む。

テーブルを挟んだ向かい側のソファに座る私は背筋を伸ばし、膝の上に置いた両手にぐっと力を込めた。

まさか社長室に連れてこられるなんて思わなかった。いざここまで来て自分の行動の無謀さに少しばかり後悔してしまう。


でも商店街を守りたいと思う気持ちは変わらない。


それまで俯いていた顔を上げて目の前の葉山社長を見つめれば、彼もまた私のことをじっと見ていた。

さすが数千人の社員を束ねる大企業の社長だけはある。まだ30歳という若さなのに貫録があって、オーラがとても強い。こんな近くにいると圧倒されてしまう。

正直、こわい………。

でもそれに負けるわけにはいかない。
私はどうしても伝えたいことがある。

再び決意をして葉山社長を見つめた。

「あ、あのっ」
「もしかしてお前の話って」


私の言葉にかぶせるように口を開いたのは葉山社長だった。


「俺に愛の告白とか?」


「…………は?」

親会社の社長に向かって失礼だとは思うけれどまさかなその言葉につい呆れた声が飛び出てしまった。

愛の告白って…。
どうしてそうなるの?

ぽかんとしている私に、葉山社長が楽しそうに笑っている。

「いや、お前みたいなやつよくいるんだ。この前はうちの秘書課の子だったな。さっきのお前みたいに声掛けてきて俺に告白してきたんだよ。ほら、俺って社長だけど若いでしょ?なんか親しみ感あるみたいでさらっと声掛けられちゃうんだよねぇ。ま、俺も来るもの拒まずな性格だから別にいいんだけど」

「へ、へぇ…」

気の抜けた返事をしてしまう。

「それでその子とはワンナイトな関係で終わったんだけどさ」

「ワ…ワンナイト?」

言葉の意味が分からずに何となく聞き返してしまった自分を数秒後にひどく後悔した。別に知らなくてもいい単語だった。

「一夜だけ体の関係を持ったってこと。相手もそれで満足してたみたいだし、俺もそういう方が後腐れなくて楽しいし」

「…………」

というか私、社長室に来ていったいどういう話をされているんだろう。

こんな話を聞かされるために声をかけたわけじゃないんだけど。

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