俺様御曹司と蜜恋契約
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その夜、部屋のベッドに寝転がりながらくつろいでいると、突然スマホが鳴った。
驚いて画面を確認すると久し振りの葉山社長からの着信だった。ベッドから飛び起きると急いでその電話に出る。
「もしもし」
『よぉ、花』
いつも通りの呑気な葉山社長の声が聞こえてきた。
「葉山社長……あの、えっと…」
言いたいこと、聞きたいことはたくさんある。けれどどれから話していいのか分からずに言葉につまってしまう。もごもごと口を動かしていると電話の向こうの葉山社長が小さく笑うのが分かった。
『つーかその呼び方やめない?俺もう社長じゃないし』
「あ…」
葉山社長は社長を退任したんだった。そのことについても聞きたいのにどう声を掛けていいのか分からずに黙ってしまえば、葉山社長の声が耳に届いた。
『安心しろよ花。葉山グループは森堂商店街から完全に手を引いたから。叔父が社長になっても再開発は絶対にしない』
だから安心しろ、と葉山社長は言うけれど。
「どうして社長を辞めたんですか?」
そう質問すれば葉山社長はいつも通りのおどけた調子で『そこ気になっちゃう?』と笑いながら言った。
『叔父と取引したんだ』
「取引?」
『ああ』
それから葉山社長は会見でも語られなかった今回の葉山グループの突然の社長交代についてを私に教えてくれた。