俺様御曹司と蜜恋契約



家を出たときは午後2時半を過ぎていた。

ここから空港まで電車で1時間ほど。4時の飛行機の時間にはなんとか間に合いそうだけど、時間内に着くことができても空港内にいるたくさんの人の中から葉山社長を見つけないといけない。

とりあえず今は電車に乗るため最寄りの駅まで走っている。と、後ろからプップーと車のクラクションが聞こえた。立ち止まって振り返れば黒塗りの車が私の横で静かに停車する。

サイドガラスから顔を覗かせたのは佐上さんだった。

「乗ってください」
 
助手席側の扉が開かれる。よく分からずにそのまま固まっている私に「早く」と声を強める。

「は、はい」
 
私は佐上さんの運転する車に乗り込んだ。

「シートベルトをつけてください。出発します」

佐上さんがアクセルを踏むと車がゆっくりと走り出す。

車内にはよく知っている香水の香りが漂っていて。久しぶりに香る葉山社長の香水はついさっきまで彼がこの車に乗っていたことを教えてくれる。

「これから空港へ向かいます」

佐上さんが静かな声で告げる。

「さきほど光臣社長を空港まで送ったばかりです。今ならまだ間に合います」

それだけを言うとあとは何も喋らずに車を走らせた。

どうやら佐上さんは私のことを葉山社長のもとへ連れて行ってくれるらしい。どうして彼がそんなことをしてくれるのかは分からないけれど、好意はありがたく受け取ろうと思う。


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