俺様御曹司と蜜恋契約

＊

「……はぁ」

都内のオフィス街にある葉山グループ本社ビル。

その最上階にある社長室で思わず深いため息がこぼれた。

海外出張から戻るとデスクの上には大量の書類が重なっていて、どれも社長である俺の決済待ちのものばかり。

おいおいたったの１週間本社を離れていただけでこの量かよ…と心の中で独り言ちりながら１番上の書類を手に取る。と、その下に置かれていた書類に目が入った。


『森堂商店街　再開発計画』


すぐにそれを手に取ると中身をパラパラと確認してからそれをデスクに投げつけた。

「おい、佐上。これはどういうことだ」

分かりやすいくらいの不機嫌な声を出せば、近くのデスクで仕事をしていた秘書がすぐにかけつけてくる。

「社長。いかがいたしましたか」

「どうしてこの計画が勝手に進んでるんだ」

デスクの上に投げつけた書類を指でトントンと叩いてみせる。

「この場所にうちのショッピングセンターは作らない。俺はそう言ったはずだ。それなのにどうして報告書が上がってきてる」

「そ、その件でしたら副社長が……」

おろおろとした様子の佐上の声がだんだんと小さくなっていく。


副社長。


その言葉に、ああなるほどな、と全てを理解した俺はイスの背もたれによりかかり天を仰いで息を吐いた。

「あのおっさん。俺が社長なのがそんなに許せないのかよ」

俺だって欲しくて座っているイスじゃねーよ。