俺様御曹司と蜜恋契約
「なんだお前のその間抜けな顔。お前が商店街の再開発をやめろって言ったんだろ」

「……」

たしかにそうだけど。
でもまさかこうもあっさりと受け入れてもらえるなんて思わなかった。

「そうですけど……でも」

動揺している私を見ながら葉山社長がふっと笑う。

「ただし俺と取引だ」

切れ長の目が鋭く私を見つめた。

「俺が出した条件にお前が頷いたら、お前の望み通り森堂商店街の再開発をやめてやる」

「…条件、ですか?」

「ああ。お前にもできる簡単なことだ」

「それってどんな…?」

いったいどんな条件を言われるんだろう。
葉山社長の瞳をじっと見つめてその言葉を待つ。

彼の顔がニヤリとした笑みを見せた。


「俺の女になれ」


…………。


「えっ?」

この人、今、何て言ったの?

「すみません社長。おっしゃっている意味が分からないのですが……」

そう聞き返せば、葉山社長の低い声がさっき名乗ったばかりの私の名前を呼ぶ。

「だからさ、花ちゃん」

「……はい」

「俺の恋人になれって言ってんの。そしたら商店街から手を引いてやるよ」

「え……」

いや…………はぁ?
どうしてそうなるの?

困惑して次の言葉が出てこない私に向かって「な、簡単だろ?」と葉山社長は楽しそうに笑っている。

簡単なことじゃないでしょ?

そんなめちゃくちゃな条件にハイなんて言えるわけがない。
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