俺様御曹司と蜜恋契約
最初のキスとは違い、舌が侵入してきてビクリと体が震えた。

「…………!」

抵抗ができなくてそれを受け入れるしかなかった。

そのまま口内をうごめくと、やがてゆっくりと離れていく。

突然の長いキスが終わると私は荒い呼吸を整えながら肩で息をする。一方の葉山社長は平然としていて余裕な笑みを浮かべていた。


「やっぱりな」


そう言って、葉山社長が舌を出して私に見せた。そこには丸い小さな何かがころんと乗っていて……。

「俺と話している間、お前ずっと飴なめてただろ」

「―――っ」

エントランスにいたときから舐めていた飴玉がいつの間にか葉山社長の舌の上に移動していた。

さっきのキスで…?

「甘いなこれ。いちご味か?」

そう呟いて葉山社長は飴玉を口の中でかじり潰した。

それからソファから立ち上がると私に背を向けて扉へと向かう。ドアノブに手を掛けたところで再び私を振り返った。


「今日からよろしくな、花」


そう告げると葉山社長は部屋を後にした。


「…………」

しんと静まる社長室。

ぽつんと取り残された私は彼が出て行った扉を眺めながら思う。


もしかして私はとんでもない人ととんでもない取引を結んでしまったのかもしれない……。
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