俺様御曹司と蜜恋契約

 「取引は始まってるんだ」





あれから1週間が経った。

森堂商店街は以前よりも活気が出ているような気がする。

再開発という大きな危機に直面して商店街みんなの団結力がさらに強まり、商店街に対する思いが増して強くなったからかもしれない。

あれから再開発の話が浮上することもないので、葉山社長は本当に森堂商店街から手を引いてくれたみたいだ。


『俺の女になれ』


とんでもない取引を持ち掛けられて思わず頷いてしまったけれど、実はあれから葉山社長からの連絡はない。

もしかしたら冗談だったのかも……?

最近ではそう思うことにしている。


あれから、職場の同じフロアで働いている持田(もちだ)さんにそれとなく葉山社長のことを聞いてみた。もちろん取引のことは彼女には話していない。

情報通の彼女が言うには、葉山社長はそうとうなプレイボーイらしく過去には有名なモデルや女優と噂になったり、高級クラブのホステスさんと遊び歩いたりしているとか…。女性についてはあまり良い噂をきかないらしい。

そういえば社長室での会話の中でも葉山社長自身がそんなことを言っていた。同じ会社の女性社員とワンナイトラブな関係を持ったとか…。

そんなにたくさん遊び相手がいる人が私なんかを相手にするはずがない。

あれから特に連絡もないことだし、あの取引は葉山社長のただの気まぐれで私をからかっただけ。もしかしたら本人ももうすっかり忘れているのかもしれない。


……うん。きっとそうだよね。


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