俺様御曹司と蜜恋契約
「あれから出張や会議で忙しくてな。お前に連絡しようとしたんだけど、そういえば連絡先聞くの忘れてた。うちの子会社にいるって言ってたから電話してみたんだけど。お前今日ヒマ?」

「え?」

「仕事何時に終わんの?」

「えっと…」

「俺の会議が5時に終わるからそれからでいいな。じゃ、後で迎えに行くから」

「えっ?ちょ、ちょっと待ってくだ――」

そこで電話は切れていた。
ツーツーと空しい音が耳に響く。

しばらくその音を聞きながらやがて静かに受話器を置いた。

「ゆ、湯本くんっ」

穂高部長が慌ててかけよってくる。

「葉山社長からの電話、何だった?どういう内容だったの」

「…何だったんでしょうか」

自分でもどういう内容だったのかよく分からない。

迎えに来るって言っていたけど……。

「湯本くんが葉山社長と関わることなんてないよね?それなのにどうして……」

「あっ!部長、休憩の時間ですよ。コーヒー淹れてきますね」

穂高部長の言葉を遮って、私は慌ててフロアを飛び出した。

私と葉山社長の関わりといえばやっぱりあの『取引』しか思い浮かばない。


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