俺様御曹司と蜜恋契約
「ってことでお前は今日から俺と付き合う。わかったか」

わかったか、と言われても……。

「返事は?」

「……」

「おい、返事」

語気を強めたその言い方に思わず「は、はい」と頷いてしまった。

「ちっせぇ声だな。不満なの?」

「いえ…不満というか」

もごもごと口ごもる私に葉山社長がため息をついた。

「だったらやめるか?あの取引なかったことにしてあげてもいいけど」

「本当ですか?」

できることならそうしたい。

正直に言えばあのときの私は葉山社長のカウントダウンに焦ってしまってよく考えもせずにその取引に応じてしまった。なかったことにできるならそうしたいに決まっている。

「でもあの取引をなかったことにするなら俺はお前の頼みもきいてやらないから」

「…と、言いますと?」

「森堂商店街の再開発、今からでも推し進めるけどいいの?」

「そ、それはっ…」

困る。
何としても阻止したい。

そもそも葉山社長はただで商店街の再開発から手を引いてくれたわけじゃない。私が彼の持ち掛けた取引に応じたから私の頼みを聞いてくれただけで。


ふと商店街のことを思い出した。
再開発がなくなって喜ぶ両親の姿。安心したように笑っていた商店街のみんなの姿。

せっかく再開発がなくなったのに、もしまたその話が浮上したらみんなのその笑顔がまた曇ってしまう。

森堂商店街は、大企業・葉山グループを敵に回して戦わなければならなくなる。
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