俺様御曹司と蜜恋契約
結局なんの答えも出せないまま気が付けば葉山社長の運転する車は高層マンションの駐車場に停まった。

今さら帰るわけにもいかず、車を降りて葉山社長の後を着いていく。

もしかして…と思ったけれど、どうやらここは葉山社長の自宅のようで最上階の部屋に通された。

玄関を開けた長い廊下の先にあるリビングはとても広い。そこでまず目を引いたのは立派なアイランドキッチンだった。一人暮らしの男性の部屋にしては本格的だし、そこには調理器具や調味料が一式すべて揃っていた。

リビングにはあまり家具は置かれていなくて、4人掛けの白いダイニングテーブル、革ソファ、ガラスのローテーブル、テレビなど必要最低限のものしか置かれていないシンプルな部屋。家具があまり置かれていないせいか部屋の広さがよりいっそう目立っている。

アイランドキッチンの他にも目を引いたのが大きなガラス張りの窓。吸い寄せられるように近付けば、そこからは都内の夜景が一望できた。

「わぁ…。すごくきれい」

その光景に感動してしまい、しばらくそこからの景色を眺めていた。

すると後ろから呆れたような声が聞こえる。

「お前って単純だよなぁ」

振り向けば、スーツの上着を脱いだ葉山社長がそれをソファの背もたれにかける。そして片手でネクタイを緩めた。

「まぁ商店街の再開発をやめろと俺に直接言ってきた時点で猪突猛進な単純バカだと思ったけど」

「単純バカって…」

いくらなんでもその言い方はひどくない?

葉山社長はネクタイを緩めた手で今度はワイシャツの第一ボタンを開けた。今まで隠れていた喉元がはっきりと見えるようになって、それだけで男性慣れしていない私には十分な刺激になる。思わず視線をそらしてしまった。
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