俺様御曹司と蜜恋契約
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うちの倍ほどはある広さ、しかも初めて使うキッチンに戸惑いながらも一品の料理を完成させた。
「できましたよ」
平たい丸皿に出来上がった料理を乗せてダイニングテーブルへと運ぶ。
「へぇ。美味そうじゃん」
料理を見た葉山社長が満足そうに頷いてくれたことにひとまず安心する。
私たちはダイニングテーブルに向かい合って座った。
「カルボナーラ?」
そう聞かれたので頷く。
「はい。フェットチーネがあったので使わせていただきました」
「ああ。たしか前の海外出張のときに見つけて買って来たんだった」
フェットチーネは平べったいパスタのことだ。普通のパスタよりもソースとよく絡み合うのでカルボナーラにはオススメの麺。
何でも使っていいと言われたので遠慮なく使わせてもらった。
冷蔵庫の中にもベーコンとチーズとたまねぎがあった。生クリームはなかったけれど牛乳とコンソメがあったのでそれでソースを作った。
「お口に合うかどうか分かりませんが」
味見はしたけれど葉山社長が気に入ってくれるかは分からない。なんせ相手はあの有名料理研究家の葉山今日子の息子なのだ。それに、大企業の御曹司でもあるのだから小さな頃から高級料理に慣れ親しんでいてさぞ舌が肥えていることだろう。
「じゃ、いただくか」
葉山社長はフォークを手に取ると両手を合わせ「いただきます」と呟いた。
その姿に彼の育ちの良さを見たような気がする。料理研究家のお母様の教育なのだろうか。食事に対するマナーはしっかりとしているのかもしれない。