俺様御曹司と蜜恋契約
「だって花、昨日の仕事終わりに男の人の車に乗ってどこか行かなかった?てっきり彼氏とデートだと思ったんだけど」

昨日……。
そう言われ思い出したのは葉山社長とのこと。

きょとんとした表情を浮かべている私に、持田さんも「あれ?違った?」と首をかしげる。

「でも私たしかに見たんだけど。あっ、見たと言っても少しだけね。相手の男性は後姿しか分からなかったけど、でもすごく背が高かったし、後姿だけでイケメンだと判断したわ。しかもあの車外車よね?着ていたスーツも体のラインにぴったりと合っていたからたぶんオーダーメイドね。お金持ちなんじゃないの?」

さすが持田さん。月に2・3回のペースで合コンへ行っているせいか男性を見る目が鍛えられている。少し見ただけでそこまで分かってしまうなんて。

「あの人、花の彼氏でしょ?」

あらためてそうたずねられて、私は首を大きく横に振る。

「ち、違いますっ。彼氏じゃありません」

「じゃあ誰?」

「誰って……」

聞かれても困ってしまう。

親会社の葉山社長です。なんて正直に答えたらそっちの方がややこしい話になりそうだし。まさかあの『取引』のことを話すわけにもいかないし。

「えっと…その…」

口をもごもごさせながら、頭の中でどう説明しようか考えるけれど何も思い浮かばなかった。とりあえず葉山社長ということだけはバラさないようにする。

「あの人は彼氏ではなくて、ちょっとした知り合いです」

「知り合い?」

「はい」

「歳は?」

「えっと…たしか30だったかな」

「ふーん。年上かぁ。仕事は何してるの?」

「しゃちょ…」

社長、と言いそうになり慌てて口を閉じる。

「えっと…普通の会社員です」

「どこで知り合ったの?」

「えっと……。前にちょっといろいろあって…」

どうしよう。もう限界。もう何て言っていいのか分からない。

そんな私の曖昧な説明だけでは持田さんは納得していないようで、頬杖をつきながら私のことをじっと見ている。しばらくしてから「ま、いっか」と呟いた。

「よく分からないけど、とにかくあの人は花の彼氏じゃないってことね」

「…はい」

「じゃあ紹介してよ」

「えぇ?」

なんでそうなるの持田さん。
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