俺様御曹司と蜜恋契約
「前の男っていうか、葉山社長とは一回寝ただけだってば。それから会ってないよ」

「一回でも葉山社長と関係持てたなんて羨ましいよ」

「じゃあ声掛けてみたら?可愛い子なら相手にしてくれるよ葉山社長。秘書課の子なんてほとんど葉山社長と関係持ったって噂じゃん」

「葉山社長はワンナイトラブな人だからねぇ」

…………。

彼女たちの会話を聞きながら自然と眉間に皺を寄せている自分に気が付きハッとなる。慌てて指で揉み眉間をほぐした。

葉山社長ってやっぱりそういう人なんだ……。

初めて会った日の社長室での会話を思い出す。そういえば社員の女性に声を掛けられてワンナイトラブをしたと言っていたっけ。まさか今日の女性陣の中にその相手の一人がいたなんて。

「葉山社長は本命の子は作らないって噂だよね。ほとんどが一夜の関係だけで終わるらしいし」

「そうそう。しかも一度寝た子とはそれからもう会わないんでしょ」

「でもさぁ、葉山社長が相手なら一夜だけの関係でもいいよね」

彼女たちの会話を聞きながら背中にぞぞぞっと冷たいものが走っていく。

やっぱり私はとんでもない人ととんでもない取引をしてしまったのかもしれない。

『俺の女になれよ』

あの日の言葉が耳にこだまして、思わず頭を抱えた。

どうしよう。
私もワンナイトラブされてしまうのかな……と考えて「ん?」と思い直す。

そういえば私は葉山社長のマンションにまで行ったのにワンナイトラブ的なものが起こらなかった。

私がしたことといえばお腹を空かせた葉山社長にカルボナーラを作ってそれを一緒に食べただけ。そのあとも特に何事もなく家まで送り届けてもらったし。

突然キスをされたり襲われかけたりはしたけど、でも体の関係は持っていない……。

この前は大丈夫だったけどもしかしてこれからとか??

そう思ってブルッと体が震えた私は、結局お手洗いに入ることなく元の席に戻ることにした。

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