俺様御曹司と蜜恋契約
ベンチの近くにある電灯は消えかけていて、暗くなったり明るくなったりを繰り返している。人通りのない道路に面している静かな公園のベンチで私は小野田さんの気分が良くなるのをひたすら待った。

けれど彼の具合は悪そうで。

「何か飲み物でも買ってきますか?」

「ううん。大丈夫」

「背中でもさすりますか?」

あまりにもぐったりとしているので心配になり小野田さんの背中に手を置いた。そのままゆっくりと上下に動かしてさすってあげる。

「ありがとう、湯本さん」

「いえ」

「湯本さんにこうされてるとすごく気持ちいい」

それなら良かった。
早く具合が良くなってくれるといいんだけど。

その後も小野田さんの背中をさすり続けていると、

「湯本さんに彼氏がいないのが不思議だなぁ」

ふとそんなことを言われた。

「こんなに可愛くて優しいんだから合コンなんかに参加しなくても彼氏なんてすぐにできるでしょ?」

「えっ。あ、いえ…」

別に私は彼氏が欲しかったとかそういう理由じゃなくて、持田さんに人数合わせで急遽連れ出されただけなんだけど。

「湯本さん」

それまで下を向いていた小野田さんがふいに顔を上げると、私と視線を合わせてくる。

「良かったら、俺と付き合わない?」

「えっ?」

突然の言葉に背中をさする手がぴたりと止まった。

「俺、今日湯本さん狙いだったんだよね。可愛いなぁと思って積極的に声掛けてたんだけど。二人きりになってこんなことされてたら期待しちゃうよ?」

そう言って小野田さんが私の腕を掴む。そこにはさっきまで具合が悪そうにしていた彼はどこにもいなくて、私の腕を掴む力はとても強い。

「あの、小野田さん?酔いは醒めたんですか?」

「ごめん。あれウソ。湯本さんと2人になりたくて」

ぐいっと腕を引き寄せられる。

「ねぇこのまま俺とホテル行かない?」

「えっ」

「いいよね、行こうよ」

ベンチから立ち上がった小野田さんに腕を引っ張られそのまま無理やり立たされる。

「あの…えっと…」

「ほら、行こうよ」

「いえ、私は……」

ホテルという言葉に身の危険を感じた。
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