俺様御曹司と蜜恋契約
その背中を見送りながらホッと一息つくと、コツンと頭に鈍い痛みが走った。

「いたっ」

両手で頭をおさえながら見上げれば、むすっとした表情の葉山社長と目が合う。

「ったく、危機感もてよアホ」

深いため息をつかれてしまった。

「あんな下心丸見えの男にホイホイついていきやがって」

「いたっ」

葉山社長が軽く丸めた手の甲でコツンと再び私の頭をたたく。

「俺が来なかったら今頃お前あいつにホテル連れ込まれてヤられてたぞ」

「ヤられ…って」

その言葉に思わず俯く。

たしかにあのまま強引にホテルへ連れて行かれたらそういう事態になっていたかもしれない。でもそれを葉山社長が言うの?自分だって昨日、私のことをマンションへ連れて行って襲おうとしたくせに。………結果的に襲われてはいないけど。

今回は危なかったのかもしれない。

どうしてここに葉山社長がいるのか分からないけどこの人が助けてくれなかったら今頃私は小野田さんに……。想像してブルッと体が震えた。

「…ありがとうございます」

助けてもらったことに変わりはないのでここは素直にお礼をしておく。

「でもどうして葉山社長がここにいたんですか?」

偶然通りかかったとは思えないし。

顔を上げて葉山社長を見つめれば彼の手が伸びてきて、私のほっぺたを思い切りつねった。

「お前の後をつけてたんだよ。俺との約束破って合コンなんぞ行きやがって」

「いたたっ。痛いです」

つねられたほっぺたが痛い。
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