俺様御曹司と蜜恋契約
「昨日、また明日な、ってお前に言ったよな。今日も何回も電話したのに出ねーし電源切られるし。会社に電話したらお前はいねぇとか言われるし。だからお前の仕事終わるのを会社の前で待ち伏せしてたら、職場のやつと一緒にどこかへ行くお前が見えたんだよ。俺に気付きもしないでな」

片方だけつねねらていたほっぺたが両頬に変わる。

「いたたっ」

「ムカついたから後をつけてたら店の前で男と合流して合コンか?お前、俺との取引忘れてねーだろうな」

「お、おぼえてます」

「じゃあ言ってみろ。俺とどういう取引したか」

つねられていた頬がようやく解放される。けれど痛みがじんじんと残っていて頬に手を添えながら小さな声でぼそっと呟く。

「森堂商店街の再開発をやめてもらう代わりにあなたと付き合う…」

「覚えてんじゃん。お前は今は俺の女なんだから合コンなんて行ってんじゃねーよ」

葉山社長の腕が伸びてきたと思ったら、その手が私の後頭部に回される。そのままぐいっと引き寄せられて、腰をかがめた葉山社長の顔が目の前にあった。

「……っ」

気が付いたときには唇が塞がれていて。

腰に手を回されそのまま体を引き寄せられる。一度唇が離れたと思ったらまた塞がれて苦しくて声が漏れた。

しばらくしてようやく離れると全身から力が抜けていく。

「家まで送ってやるから帰るぞ」

葉山社長が私の腕を掴み、そのまま引っ張られるようにして歩き出した。

その背中を見つめながら思う。

やっぱり私はとんでもない人ととんでもない取引をしてしまった。

俺様社長とのこの取引はいったいいつまで続くんだろう……。


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