俺様御曹司と蜜恋契約

 「お前に興味を持ったから」





「ごめんね。花を置いてカラオケに行ったりして」

翌日、会社に出勤してきた持田さんが私を見るなり顔の前で両手を合わせる。

「私も花のこと待っていたんだけど…」

持田さんの話によると『僕が湯本さんのことを待っているから』と小野田さんに言われたらしい。彼のその言葉を聞いた持田さんは今回の合コンで私と小野田さんが良い雰囲気になっていると勘違いして小野田さんに私のことを任せることにしたそうだ。

「それでそのあと小野田さんとはどうなったの?」

「…何もありませんでした」

ホテルに連れて行かれそうになりました、と正直に言ってもよかったけど黙っておくことにした。それに葉山社長が助けてくれたから未遂に終わったし。

その葉山社長は昨日あの後、私のことを商店街の入口まで送ってくれた。

『明日も迎えに来るからな』

という言葉を残して……。



そしてその日の仕事終わり。
その言葉通り、葉山社長が私のことを待ち構えていた。

「--よぉ、花」

会社の前の道路脇には彼の愛車の黄色の高級車が止まっている。

「乗れよ」

愛車に招き入れられた私は小さくため息をこぼしながらも素直に助手席に乗り込んだ。

車は目的地を告げないまま発進する。ちらっと隣の運転席に視線を向ければハンドルを握る葉山社長の姿が目に入る。

かっこいい人なんだとは思う。

二重のきりっとした目に、すっと通る鼻筋。薄い唇にしゅっと細い顎。さらさらとした黒髪に、形のいい耳。ハンドルを握る手は大きくて、すらりと長く指が伸びている。

ネイビーのスーツをきりっと着こなす彼はどこにも隙がないイケメンだと思う。

ワンナイトラブでもいい、と女性に言わせてしまうのにも頷けるような気がする。

ワンナイトラブか………。
< 64 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop