俺様御曹司と蜜恋契約
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葉山社長のマンションのリビング。
アイランドキッチンの前に立った私はブラウスの袖をまくった。
このキッチンで料理をするのは2回目だけどやっぱりとても立派だ。料理道具の全てが揃っていてどれもほどよく使われている跡がある。中には少し年季の入ったものもあったりして、もしかしたらこの料理道具たちは葉山社長が料理研究家のお母様の形見として置いているのかなぁ…なんてことを思った。
洗ったお米を高級な土鍋にセットすると炊き上がるまでに二品の料理を作った。しいたけを使ったすまし汁といんげんの胡麻和え。それからメイン料理にとりかかる。
即席でダシを作り、小ぶりなフライパンにたまねぎと一緒に入れて煮る。そこへみりんやしょうゆなどの調味料と鶏肉を加えてしばらく煮込む。鶏肉に火が通ると、溶いた卵を回し入れる。半熟になったところで火を止めて余熱で少し温める。出来上がったそれを炊き上がったご飯に乗せれば完成だ。
「できましたよ」
ダイニングテーブルの上に料理を並べれば、ソファに座りながら仕事をしていた葉山社長が膝の上に広げていたノートパソコンを閉じた。
「いい匂いだな」
ソファから立ち上がりダイニングテーブルのイスに座る。
「お前の得意料理は親子丼か」
美味そうじゃん、とお皿の中を覗き込む葉山社長。私は彼の手前のイスに座ると自信満々に答えた。
「親子丼はうちの食堂の人気メニューです」
得意料理が食べたい。
そう言われてすぐに思いついたのが親子丼だった。ゆもと食堂の人気メニューで、私が父親から初めて教えてもらった料理だ。
本当は割り下を作るのにもっと時間と手間をかけたかったけど時間もあまりないのでそこは即席で簡単に。それでもこの前のカルボナーラよりも自信はある。