俺様御曹司と蜜恋契約
「じゃ、いただきます」
スプーンを持った葉山社長が両手を合わせる。
卵が半熟のとろとろなので箸よりもスプーンの方が食べやすいのだ。
できたての親子丼にはまだ湯気がたっている。鶏肉はふっくらとしているはずだし、ふわふわとろとろの卵はとろみがついていてご飯とよく絡み合っているはず。
そんな私の自信作を口いっぱいに頬張った葉山社長がもぐもぐと口を動かしている。やがてゴクンと飲み込んだ。
「うん。美味いじゃん」
葉山社長の感想に思わず顔がぱぁっと笑顔になってしまう。
「よかった」
ホッと息をつく。
「お前も食ってみろよ」
葉山社長に促されて私も自分の分を食べ始めた。
うん。美味しい。
父親の味にはまだ届かないけど私なりに上達しているのが分かる。でももっと父親の味に近づきたい。同じ味で同じものを作れるように。
ゆもと食堂の看板メニューでもある親子丼は私が父親に最初に教えてもらった料理だ。小学1年生の初めての料理にしては難しかったかもしれないけど、私にはどうしてもゆもと食堂の親子丼を作れるようにならなければならない理由があった。
私の作った親子丼で見返したい男の子がいたから。
子供の頃の記憶なのではっきりとは覚えていないけど、誰もが美味しいと言って食べる父親の親子丼をその男の子だけが『マズイ』と言った。そのときのショックを私はいまだに忘れられない。
いつかその男の子に今度は私が作った親子丼を食べさせて絶対に『美味しい』と言わせるんだ。そんな思いから私は父親に親子丼を教わってずっと練習を続けてきた。
「うめーな。おかわりちょーだい」
あっという間に食べ終えた葉山社長が空になったお皿をずいっと差し出してくる。それを受け取った私は自然と笑みがこぼれた。
父親から教わった親子丼を初めて食べる葉山社長が『美味い』と言ってくれたことが素直に嬉しかった。
命令口調で強引で俺様な性格のできれば関わりたくないタイプの人だけど、作った料理を美味しいと言ってくれた葉山社長が少しだけ良い人に見えてしまうのは、やっぱり私が単純な性格だからなのかもしれない。
スプーンを持った葉山社長が両手を合わせる。
卵が半熟のとろとろなので箸よりもスプーンの方が食べやすいのだ。
できたての親子丼にはまだ湯気がたっている。鶏肉はふっくらとしているはずだし、ふわふわとろとろの卵はとろみがついていてご飯とよく絡み合っているはず。
そんな私の自信作を口いっぱいに頬張った葉山社長がもぐもぐと口を動かしている。やがてゴクンと飲み込んだ。
「うん。美味いじゃん」
葉山社長の感想に思わず顔がぱぁっと笑顔になってしまう。
「よかった」
ホッと息をつく。
「お前も食ってみろよ」
葉山社長に促されて私も自分の分を食べ始めた。
うん。美味しい。
父親の味にはまだ届かないけど私なりに上達しているのが分かる。でももっと父親の味に近づきたい。同じ味で同じものを作れるように。
ゆもと食堂の看板メニューでもある親子丼は私が父親に最初に教えてもらった料理だ。小学1年生の初めての料理にしては難しかったかもしれないけど、私にはどうしてもゆもと食堂の親子丼を作れるようにならなければならない理由があった。
私の作った親子丼で見返したい男の子がいたから。
子供の頃の記憶なのではっきりとは覚えていないけど、誰もが美味しいと言って食べる父親の親子丼をその男の子だけが『マズイ』と言った。そのときのショックを私はいまだに忘れられない。
いつかその男の子に今度は私が作った親子丼を食べさせて絶対に『美味しい』と言わせるんだ。そんな思いから私は父親に親子丼を教わってずっと練習を続けてきた。
「うめーな。おかわりちょーだい」
あっという間に食べ終えた葉山社長が空になったお皿をずいっと差し出してくる。それを受け取った私は自然と笑みがこぼれた。
父親から教わった親子丼を初めて食べる葉山社長が『美味い』と言ってくれたことが素直に嬉しかった。
命令口調で強引で俺様な性格のできれば関わりたくないタイプの人だけど、作った料理を美味しいと言ってくれた葉山社長が少しだけ良い人に見えてしまうのは、やっぱり私が単純な性格だからなのかもしれない。