俺様御曹司と蜜恋契約
「何食べたいか聞いたのはお前だろ?」

「えっ?ち、違います。私は料理の話をしていたんです」

そんな私の言葉を無視する葉山社長は右の口角だけを上げて笑っている。

「言っただろ。俺は自分の女はまず味見するって」

葉山社長の顔が私に近付いてくる。

このままだとキスされてしまう。

もう3回も彼に突然キスされているのでいよいよ分かってきた。させるものか、と私はとっさに顔をそらした。けれどそんな抵抗をしても大した効果はなくて、顎を掴まれるとぐいっと顔を元の位置に戻された。

目の前には葉山社長の顔。

初めてこのマンションに来て襲われかけたときのことを思い出す。あのときと同じ状況にある今。もしかしたらピンチなのかもしれない。前は葉山社長がお腹を空かせていたから何事も起こらなかったけど今日の彼は満腹状態。

ワンナイトラブ…。

その言葉が頭に想い浮かぶ。

ここへ向かう車の中の会話だと私が葉山社長のマンションへ連れてこられたのは今日も彼の夕食を作るためだけだと思っていたのに。食べ終わったら前みたいに何事もなく家まで送ってもらえるとそう思っていたのに。

このまま他の女性たちのようにワンナイトラブされてしまうのかな……。

その恐怖ですっかり体が固まってしまった。

すると突然、軽快な音をたててスマホが着信を知らせた。私は普段着信音を消しているのでたぶん葉山社長のスマホから。

「っち、こんなときに」

私から離れた葉山社長は軽く舌打ちをするとソファへと向かう。ローテーブルの上に置かれているスマホを手に取ると不機嫌そうな声で電話に出た。

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