俺様御曹司と蜜恋契約
就業時間になり制服から私服へと着替えると私は足早に会社を出た。ついきょろきょろと辺りを確認してしまうのは、今日も葉山社長が待ち伏せしているかもしれないから。

「…あれ?」

でも今日は葉山社長の愛車の黄色の高級車は止まっていなかった。

さすがにそう毎日私になんて構ってないよね……。

葉山社長はああ見えて大企業の社長なんだから仕事だって忙しいはず。それとも今日は別の女性の相手をしているのかも。

どちらでもいいけど今日は葉山社長の顔を見ずにすみそうだ。

ホッと胸をなでおろした私は駅までの道を歩き始める。

よかった。
今日は普通に家に帰れそう。


駅前にある映画館の前を通り過ぎたとき、そういえば観たかった映画の上映が始まっていることに気が付いた。時間を確認すればちょうどこれから上映が始まるみたいなので映画を観ていくことにした。

商店街の再開発のことや葉山社長との取引のこと。最近、悩むことが多かったから良い気晴らしになりそう。


夕食は家で食べようと思ったけど、映画が終わる頃にはすっかりお腹が空いてしまって家まで我慢できなかった。前に持田さんに連れてきてもらったことのあるお洒落な建物のラーメン屋さんに1人で入ることにした。

商店街に着く頃には夜の9時半を過ぎていて、どのお店ももうすでにシャッターが閉まっていた。その先に一軒だけまだ灯りが灯るお店を見つけて、その前で立ち止まる。


『ゆもと食堂』


私の家だ。
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