俺様御曹司と蜜恋契約
すぐ隣に住んでいるのにもう2年も顔を合わせていない。それなのにその約束を覚えていてくれて、守ろうとしてくれているなんて。

陽太の誠実な性格がすごく伝わってくる。と、同時に思い出すのはあの日私が彼のことを傷つけてしまったこと。今でも思い出すと胸がきゅっと締め付けられる。

私は小さい頃からずっと陽太が好きだった。

陽太も私のことを好きだと言ってくれたのに。

とある理由から私はその気持ちに応えることができなかった……。


「陽太のやつ自分で花ちゃんに言えばいいのに。もう2年も会ってないんだって?」

「……はい」

陽太のお父さんの言葉に私は小さく頷いた。それを見た彼はしばらく複雑そうな顔を浮かべていたけれど、やがてその顔に優しい笑みが戻る。

「二人の間に何があったのか知らないし口出しするつもりはないけど。でも、陽太が継いだ佐々木庵の1番のお客さんには花ちゃんがなってくれないかな?」

「……考えておきます」

そうは言ったけれどやっぱり陽太とは顔を合わせ辛い。

「待ってるよ。陽太も花ちゃんが来てくれたら喜ぶから」

「はい」

そう返事をしてから私は立ち去るように素早く食堂を後にした。
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