俺様御曹司と蜜恋契約
「どんな恋してんだよ」
*
「お疲れさまでした」
いつもよりも仕事が長引いてしまった。
フロアにはすでに私以外の女性事務員の姿はなくて、いつも遅くまで残業している穂高部長と男性職員数名が残っているだけ。
ロッカールームへ行けばそこにももう女性社員たちの姿はなくてどうやら私が最後みたいだ。
いつもならこの時間だとまだ数名の女性社員たちがロッカールームで世間話をしていたりするんだけど。そう思ってカレンダーに目を向ければ、そうえいば今日が金曜日だったことを思い出す。
明日が休みだから仕事終わりに予定を入れている人が多いのかもしれない。だからいつもよりも早めに会社を出たのかも。
私は特に予定もないのでゆっくりと制服から私服に着替える。そういえばこの前みた映画が気に入ったからまた観て帰ろうかなぁと考えながら。
1人映画をして帰った日からもう1週間以上が経っていた。その間、葉山社長の姿は見ていないし連絡もない。仕事が忙しいのか他の女性と会っているのか分からないけど、仕事終わりに待ち伏せされるようなことはあれからもうない。
もしかしたら私への興味が薄れたのかも?
そうだったらいいんだけどなぁ…なんて思いながら社員玄関から会社を出ると女性たちの賑やかな声が耳に届いた。
何事だろうと思い、気になって声のする方へ行ってみれば同じ会社の女性社員が集まっていた。その中には持田さんの姿もあって。
もうみんな帰ったと思ったのにあんなところで何してるんだろう?
そう思ってもっと近くへ行こうと踏み出した足がぴたりと止まる。
女性社員が集まっている近くの道路脇には見たことがある黄色い高級車が止められていて。
「…………」
瞬間、嫌な予感がして背中にぞぞぞっと冷たいものが走る。
もしかして……。
そう思ってよく見れば女性社員たちに取り囲まれている黒髪の背の高いスーツ姿の人物が…。目に入ったとたんすぐに近くの物陰に隠れる。
「な、なんで」
そこにいたのはやっぱり葉山社長だった。
物陰から顔を出して確認すれば、葉山社長がなぜかうちの会社の女性社員たちに囲まれて楽しそうに話をしている。ときどきボディータッチを混ぜながら。