俺様御曹司と蜜恋契約
「何かあったの?」
いつもの様子と少し違う両親を心配しつつ同じテーブルに着けば「何でもない」という言葉を返された。父親は私に視線を向けないままテーブルの上の急須を手に取ると湯呑にお茶を注ぎ、それを私の前のテーブルに置いてくれた。
「ありがとう」
湯呑を両手で持ち熱々の中身を冷ますため、ふーふー、と何度か息を吹きかけてから口をつける。まだお茶が熱かったようで舌がヒリヒリとした。
そうしている間にも両親の表情は曇ったままで。
何でもない。
と、父親は言ったけれどこれはやっぱり何かあったに違いない。
「どうしてそんなに沈んだ顔してるの?」
隠し事が苦手な両親。いつもと違う行動と浮かない表情を見ればすぐに分かる。
問い詰めれば、やがて母親が深いため息をこぼした。
「花ちゃんには黙っていようと思ったんだけど…」
いつもよりも少し低めな母親の声に私は手に持っていた湯呑をテーブルに置いた。母親がゆっくりと口を開く。
「お店もう続けていけないかもしれないの」
「えっ…?」
突然の母親の言葉に戸惑いながらも父親へと視線を流せば、口を真一文字に結んだまま難しそうな表情で視線を落としていた。
還暦を迎える両親だけど体も心もまだまだ元気で『100歳まで食堂に立つ』が二人の合言葉だった。
それに去年の秋には私に婿を取らせてお店の後を継いでもらおうと、都内の和食料理店で板前をしている40歳の男性と無理やりお見合いをさせられた。もちろんそれは丁重にお断りしたけれど。
『ゆもと食堂』を愛しているはずの両親。それなのにもうお店を続けられないってどういうこと?
「ちょっと待って。突然どうしたの?」
テーブルに乗り上げるようにして母親に詰め寄れば力の無い笑顔が返ってくる。
「花ちゃんには黙っていたんだけど、今年に入ってから森堂商店街に再開発の計画があるのよ」
「再開発?」
「森堂商店街の土地に新しいショッピングセンターを建てようと計画している会社があるの。その説明会が今日あってお父さんと一緒に行ってきたのよ」
「……」
知らなかった。
まさか森堂商店街に再開発の計画があったなんて。
いつもの様子と少し違う両親を心配しつつ同じテーブルに着けば「何でもない」という言葉を返された。父親は私に視線を向けないままテーブルの上の急須を手に取ると湯呑にお茶を注ぎ、それを私の前のテーブルに置いてくれた。
「ありがとう」
湯呑を両手で持ち熱々の中身を冷ますため、ふーふー、と何度か息を吹きかけてから口をつける。まだお茶が熱かったようで舌がヒリヒリとした。
そうしている間にも両親の表情は曇ったままで。
何でもない。
と、父親は言ったけれどこれはやっぱり何かあったに違いない。
「どうしてそんなに沈んだ顔してるの?」
隠し事が苦手な両親。いつもと違う行動と浮かない表情を見ればすぐに分かる。
問い詰めれば、やがて母親が深いため息をこぼした。
「花ちゃんには黙っていようと思ったんだけど…」
いつもよりも少し低めな母親の声に私は手に持っていた湯呑をテーブルに置いた。母親がゆっくりと口を開く。
「お店もう続けていけないかもしれないの」
「えっ…?」
突然の母親の言葉に戸惑いながらも父親へと視線を流せば、口を真一文字に結んだまま難しそうな表情で視線を落としていた。
還暦を迎える両親だけど体も心もまだまだ元気で『100歳まで食堂に立つ』が二人の合言葉だった。
それに去年の秋には私に婿を取らせてお店の後を継いでもらおうと、都内の和食料理店で板前をしている40歳の男性と無理やりお見合いをさせられた。もちろんそれは丁重にお断りしたけれど。
『ゆもと食堂』を愛しているはずの両親。それなのにもうお店を続けられないってどういうこと?
「ちょっと待って。突然どうしたの?」
テーブルに乗り上げるようにして母親に詰め寄れば力の無い笑顔が返ってくる。
「花ちゃんには黙っていたんだけど、今年に入ってから森堂商店街に再開発の計画があるのよ」
「再開発?」
「森堂商店街の土地に新しいショッピングセンターを建てようと計画している会社があるの。その説明会が今日あってお父さんと一緒に行ってきたのよ」
「……」
知らなかった。
まさか森堂商店街に再開発の計画があったなんて。