俺様御曹司と蜜恋契約
親会社の社長に『彼女』と言われ、その車に乗って夜の街へと消えていく……。

これは絶対に噂のネタにされてしまうパターンだ。そんなことになったら仕事がしづらくなってしまう。

葉山社長との関係もあの取引のことも2人だけのヒミツだと思っていたのに。

どうしてみんなの前で彼女とか言うの…?

「はぁ……」

深いため息がこぼれてしまう。それを横目で見た葉山社長が呑気に声を掛けてくる。

「どうした?」

「いえ、何でもないです」

きっと私がいろいろ抗議したってこの人には分かってもらえないんだろうなぁ。そう思って葉山社長に気付かれないよう小さく息を吐いた。

静寂に包まれた車内には海外の女性歌手の曲が流れていて。そういえば何かの映画で聞いたことがあるような気がするけどどの映画だったっけ。曲のタイトルも歌手名も思い出すことができない。でも今はそんなことを必死に思い出している場合じゃなくて。

しばらく会いに来ることがなかったから私への興味はてっきりもう薄れたと思っていたのに。葉山社長がまた私の前に現れた。しかも会社の人たちに知られてしまった。

どうしよう……。

てっきり今日も葉山社長のマンションへ連れて行かれると思っていたけれど、車はいつの間にか都内を抜けて横浜方面へと進んでいる。

このままいったいどこへ連れて行かれるのだろう。

そう思い窓の外に視線を投げた私は流れる景色をただぼんやりと眺めていた。


< 82 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop