俺様御曹司と蜜恋契約
*
「ごちそうさまでした」
全ての食事を食べ終えるとコーヒーが運ばれてきた。
「美味しかっただろ?」
カップを片手に持ち葉山社長がにこりと笑う。
「はい。すごく美味しかったです」
「そりゃよかった」
そう言って、コーヒーカップに口をつけた。
ここは横浜にある有名ホテル。その中にあるイタリア料理のレストランで葉山社長は私にコース料理をご馳走してくれた。
前菜の野菜とスープから始まり、パスタ、お肉、それからデザートまで。高級食材をふんだんに使った料理はどれも美味しくて夢中で食べてしまった。
どうやら葉山社長の行き着けらしく料理の途中ではシェフが挨拶にも来てくれた。
ゆったりとした音楽が流れる店内の天井にはシャンデリアが吊るされていて、ガラス張りの大きな窓からは横浜の夜景が一望できる。ライトアップされた観覧車が色を変えながらゆっくりと回っていてとてもキレイだ。
しばらくそれに見惚れていると目の前に座る葉山社長に声を掛けられる。
「横浜久しぶり?」
「はい」
「最後に来たのは?」
「えっと…高校を卒業した年だから6年前です」
あの日はたしか陽太に誘われたんだっけ。
いつもはそこに優子も混ぜて3人で遊ぶことが多かったから優子も誘おうと思ったけど陽太に2人きりがいいと言われた。
「誰と来たんだ?」
葉山社長はイスを少し後ろに引くと長い足を組み、お腹の前で両手を組んだ。私は手に持っていたカップをテーブルの上に置いてから答える。
「幼馴染です」
「女?」
「…いえ」
「じゃあ男か」
ぼそっと呟いた葉山社長が窓の外へ視線を投げる。
「アレ乗った?」
そこにはライトアップされた観覧車がゆっくりと回っていて。
「デートの定番だろ?」
「デートじゃないです」
つい大きな声で否定してしまった。
デートなんかじゃない。
陽太とはただ遊びに来ただけ。
観覧車の中央にある時計の時刻を見て、そういえばちょうどこのくらいの時間だったな、とあの日のことを思い出してしまう……。