俺様御曹司と蜜恋契約
ホテルのレストランから見える観覧車はあの日とまったく同じ。でも、私と陽太の関係は変わってしまった……。
「なにぼけーっとしてんだ」
ふとそんな声が聞こえて、慌てて観覧車から視線を戻せば葉山社長がじっと私のことを見ていた。
「何でもありません」
そう答えて私はコーヒーカップに口をつける。
いけない。
うっかり陽太とのことを思い出してしまった。
本当にもう忘れないといけないのに。
「好きなのか?その幼馴染のこと」
突然そんなことを言われて、私は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる。
「な、なんでそうなるんですか」
幼馴染としか言っていないのに。それなのにどうして好きだと言い当てられてしまうんだろう。
「お前、分かりやすいよな。なんか寂しそうな顔して観覧車見てるから。もしかして前に一緒に横浜へ来たっていう幼馴染の男に片思いでもしてんのかなぁと思ったんだけど。俺の勘あたってる?」
「……あたってません」
ずばりその通りなんだけど。この人に私の恋の事情を知られたくなくて嘘をついた。
それにしても私そんなに寂しそうな顔していたのかな…。
窓の外へ視線を向ければ見慣れた自分の顔がぼんやりとガラス窓に映し出される。それに向かって微笑めばなんともぎこちのない笑顔になった。
「あれまだ動いてるよな」
葉山社長が腕時計を確認すると、組んでいた足を元に戻す。
「行くぞ」
イスから立ち上がると、私の腕を掴みぐいっと引っ張る。
「ちょ…えっ?」
無理やり立たされると、そのまま腕を引っ張られて席を離れる。
葉山社長は近くにいたウエイトレスに声を掛けるとスーツの内ポケットから財布を取り出してそこからカードを抜き出すと素早く会計をすませた。