俺様御曹司と蜜恋契約
葉山社長が小さく息を吐く。

「俺の勘ってよく当るんだよな。お前やっぱり幼馴染のこと好きなんだろ?で、この観覧車に一緒に乗ったときのことでも思い出してる。泣いてるってことはそれは楽しい恋じゃなくて辛い恋をしているから」

そうだろ?と葉山社長に言われて、私は俯いてしまった。

その通り。
私は陽太に辛い恋をしている。
そうしてしまったのは私……。

膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめると、こぼれた涙がぽつんとそこへ落ちた。やがて降り出した雨のように一滴また一滴と涙が落ちていく。


「お前どんな恋してんだよ」


ため息とともに葉山社長が突然立ち上がった。そして私の隣へ移動するとゆっくりと腰を降ろす。

決して広いとはいえない観覧車の箱の中。大人が2人で横に並んで座れば体がぴったりとくっついて。

「な、なんですか」

いきなり隣に座ってきた葉山社長の行動の意味が分からなくて、私は涙のたまる瞳で彼を見上げた。

「泣くなって」

そう呟いた葉山社長の大きな手が私の頬にそっと添えられる。そして彼の長い親指が私の目元をこすり、こぼれる涙をそっと拭った。

「俺、お前の涙には弱いんだって」

「えっ」

「だから頼むから…もう俺の前で泣くな」

頬に添えられていた手がそのまま後頭部に回されてぐいっと引き寄せられる。気が付いたときには私の視界は真っ暗で葉山社長の胸の中にいた。

「あの…えっと」

突然の出来事に困惑している私をよそに葉山社長は反対の手を私の腰に回すとさらにきつく抱きしめた。

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