怨み赤子
「ああいうクズ、今度からどうする?」


「カメラ持ち込み禁止とか? でも全員の手荷物検査とかは無理だろそんなの」


「だよな。だるすぎる」


「ところで、あの有川月乃って子のビラ配りはどうだったんだ?」


そんな声にあたしはドキッとして息を殺した。


必ず何か言われるだろうとは思っていたけれど、さすがに緊張する。


「結構配れてたみたいだよ」


「でもああいうの勝手にやられちゃ困るんだけど。真治が勝手に許可したんだろ?」


「すみません。俺は許可を出したつもりはないんですが……」


真治の言葉にあたしは目を見張った。


自分の立場が悪くなるとどこまでも知らを切るつもりなのだ。


あたしは下唇を噛みしめた。


あたしは真治がやった事をすべて知っていた。


知っている上でニコニコとほほ笑みながらビラ配りをし、そのお礼にと実行委員の手助けまでしてあげたのだ。


それなのに、こいつは……!!


わきあげる怒りを抑えるため、深呼吸を繰り返す。


ここで出て行っても事態は悪化するだけだ。


ここでの立場はあたしの方が弱い。


真治が散あたしを悪者扱いしているのをきいてから、あたしはそっと教室から離れたのだった。
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