怨み赤子
☆☆☆

大笑いしたいのはあたしの方だった。


今の真治とあたしの会話はすべてばっちり録音させてもらっていたのだ。


制服の中に隠し持っていたボイスレコーダーを取り出し、内容を確認する。


「しっかり撮れてる」


あたしはそう呟き、ほほ笑んだ。


「月乃、どこ行ってたの!?」


教室を開けると同時に、数人のクラスメートたちが駆け寄って来る。


「ちょっと外の自販機まで言って来た」


そう言い、外の自販機にしか売っていないジュースを見せた。


「それならあたしもついて行ったのにぃ!」


「あははごめんね。外は天気が悪そうで風邪でもひいたら大変だから、1人で行ってきちゃった」


適当な嘘をつくと、友人たちはあたしの優しさに喜んだ声を上げた。


「そう言えばさ、放送委員の野田さんは?」


教室内を見回してあたしはそう聞いた。


毎日昼休みになると校内放送で音楽を流すのだ。


今日はうちのクラスの野田さんが担当する曜日だ。


「野田さんだったらトイレに行ったよ。放送中に行きたくなったら大変だからって」


カナミにそう言われて、あたしは野田さんの席へと向かった。
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