怨み赤子
静かだったクラス内はあっという間ににぎやかさを取り戻し、いつもの光景が広がる。


野村さんたちはユキの机に落書きをして遊び、あたしはクラスメートたちに囲まれる。


そして真治は……ただ1人、机に向かって座っていた。


誰も真治の方を見ようとしない。


誰も真治に話しかけようとはしない。


まるでそこに真治がいる事が目に入らないようにふるまう。


今この瞬間から、真治はいない者になったのだ。


あたしは大きな声でクラスメートたちと笑いあいながら考えた。


ユキのようにいじめられながらも存在を肯定されるのと、真治のように存在自体を否定されることは一体どちらが地獄に近いのだろうかと……。
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