怨み赤子
「そう。それはよかったわ。無事に終わったのね」


リサさんはホッとした表情を浮かべてそう言った。


しかしあたしは笑う事ができなかった。


心は晴れやかな気分のはずなのに、体と頭が重たくて座ることも困難だ。


「大丈夫?」


リサさんに支えてもらいながらそうやく体を起こして、椅子に座った。


体中に汗をかいていて気持ちが悪かったけれど、シャワーを浴びる元気も今はない。


「後は逆子の怨み赤子が帰って来るのを待つだけだけど……」


リサさんはそう言った後、暗い表情を見せた。


今回の赤子が逆子だったと言う事を、リサさんはずっと気にかけている。


あたしも、生まれた赤子の美しさは少し気になる所があった。


「リサさん、怨み赤子が逆子で産れると、どうなるんですか?」


今まで聞きたくても聞けなかったことを質問する。


怨みが晴らされるまでは祈る事ばかり気にしていたため、聞くタイミングもなかったのだ。


「逆子の容姿はあなたも見た通り。母親である本人よりも美しく魅力的」


リサさんの言葉にあたしは頷いた。


「そして、あらゆる才能も月乃さん本人よりも長けているのよ」


「才能も……?」


あたしは自分の部屋に飾ってある表彰状を思い出していた。


小学校の頃からずっと続けていた水彩画が、ようやく認められたコンテスト。
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