怨み赤子
支配
自分のベッドで目を閉じると、協会の様子が浮かんできた。


あたしのお母さんと、シスターのリサさんが2人で祈りを捧げている。


真治への怨みはもう晴らされているから祈る必要はないはずなのに……。


そう思い小さく笑った。


今頃になって、お母さんはようやく気が付いたのだ。


あたしが怨みを晴らしても協会へ帰るつもりなどないと言う事を。


だから祈りをささげ続けているのだ。


あたしは目を閉じてその光景を見ながら笑い声を上げた。


こんなに沢山の怨みであふれかえっている世界からいなくなるなんて、あたしには考えられない事だった。


この世界で怨みに埋もれながら有川月乃として生活を送っていれば、あたしは間違いなく世界に名前を轟かせるような水彩画家になれるだろう。


でも……凡人に毛が生えた程度のお母さんでは、それは無理だ。


あたしは目を開けて壁にかけてある表彰状を見つめた。


日本で多少の人気が出て死んでいる水彩画と、世界的に有名な水彩画。


みんなが望む有川月乃とは、どちらだろうか?


あたしは壁から表彰状を取り、ベッドの上へと投げた。
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