怨み赤子
☆☆☆

あたしは額の汗をぬぐいまた祈りを捧げていた。


赤子は怨みを晴らせばすぐに教会へ戻って来る。


それが、朝になっても戻って来る様子がないのだ。


一晩中、リサさんと一緒に祈りをささげ、朝日が差し込んでいた。


一睡もしていないリサさんの目はうつろになり、体力の消耗も激しいのがみていてわかった。


「リサさん、少し休憩してください。あたしが祈っていますから」


枯れた声でそう言うと、リサさんは左右に首を振った。


「力を持った赤子は母親の月乃さんさえ殺しに来てしまうかもしれない。そうならないように、あの子が帰って来るまで祈り続けるしかないんです」


「でも……!」


この教会には今リサさん以外に人はいない。


休憩をせずにいつ帰って来るかもわからない赤子を待っているなんて、とうてい不可能な話だった。


だけど、リサさんの決意は固くその場を動こうとはしなかった。


どうしよう。


このままじゃあたしもリサさんも祈りをささげる事もできなくなってしまう。


あたしは教会の入口へと視線をやった。


怨み赤子を身ごもりはじめてから今まで。あたしは一度も協会から出ていなかった。
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