怨み赤子
☆☆☆

その後20分ほどしてユキのゲームが終わり、ようやく外へ出る事になった。


会計を済ませる前に勉がトイレに立ち、ユキと2人きりになった。


あたしはユキと目を合わせる事もなく、レジに視線をやる。


「勉ってさ、あたしと付き合う時なんて言ったか知ってる?」


そう話しかけられて「知らないけど」と、返事をした。


特に興味もないし、聞いた覚えもない。


「『俺について来い』って」


今度はのろけか。


そう思っていると「それなのにあいつ、どんどんあたしの尻の下に入ってくるんだよ」と、ユキは愚痴った。


ユキを見ると、本当に嫌そうな表情を浮かべている。


「ついて来いとか言いながら尻に敷かれたがって、何考えてんだろうね。金遣いも荒くて、全然将来のことなんて考えてなさそうだし」


「へぇ……」


あたしは適当に相槌をうつ。


ユキは本当に気が付いていないのだろうか?


ファミレスで、友達の前で食器の扱いを怒られた勉がどう感じているのかを。


勉のプライドなんてユキと付き合い始めた頃から徐々に削られていき、今ではほとんど消えてしまっているんじゃないだろうか。
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