怨み赤子
大人しい性格をしているカナミだから、ユキだけでなくいつもいろんなクラスメートたちからからかわれたりしていた。


そんな頼りないイメージのカナミが、こんなに大きな事を成し遂げたんだ。


もう誰もカナミを笑ったりはしないだろう。


カナミの嬉し涙を止めるために、あたしは鞄からブラシを取り出した。


「ほら、泣いてないでここに座って」


隣の席の椅子を引っ張り出し、カナミに座らせてその髪をブラッシングしていく。


「すごいねカナミは。入賞なんて誰にでもできることじゃないよ?」


「うん……」


頷くその声も、まだ涙にぬれている。


「さっきから何の話をしているの?」


興味を持ったクラスメートたちが寄って来る。


あたしはまるで自分の事のように自慢しながら、カナミの勇士を説明した。


みんな一様に目を見開いて驚き、そしてカナミを見直したように拍手をした。


カナミの嬉し涙はとまる所か、次々と声をかけられることで余計に涙ぐんでしまった。


「ほら、綺麗になった」


カナミの髪をとかし終えてあたしは言う。


「ありがとう、月乃」
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