怨み赤子
「あたしにできることなんてこのくらいだから」


あたしがそう言うと、カナミは嬉しそうにほほ笑んだ。


いつの間にかあたしとカナミの周りには生徒たちであふれかえっていて、カナミへの質問大会のようなものが始まっていた。


「小説なんていつから書いてたの?」


「他に書いている小説ってあるの?」


「将来の夢って小説家?」


そんな質問に、カナミは照れながらもちゃんと返事をしていく。


すごい事を成し遂げたのにいつも通り謙虚な態度なのは、カナミのいいところだった。


そう思っていると、前のドアが開いてユキが入ってきた。


あたしは自然とユキから視線をそらせてしまう。


昨日の事を思い出すとどうしても笑顔にはなれなかった。


けれど、ユキがこの賑わいを無視するわけがなかった。


「なんの話をしてるの?」


さっそく輪の中に入ってきて、カナミがその中心にいるのを見た瞬間、表情が少しだけ険しくなった。


いつも見下している相手がなぜだか話題の中心になっている。


それだけでユキは気に入らないのだ。


「なんの話?」


ユキが近づくだけでカナミの表情は曇る。

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