怨み赤子
「そうだ、今度は漫画原作を書いてよ」


ユキは更にそんな事を言い出した。


「漫画原作は……シナリオで小説とは違うから……」


カナミが小さな声でそう言う。


ユキは自分が活字を読むのが苦手だから、そんな事を言っているのだ。


漫画になったら読むから。


遠まわしにそう言っているのがバレバレだ。


「ちょっとユキ、いい加減にしなよ」


あたしは思わずそう言っていた。


「カナミはずっと小説を書いてきて、小説家になるのが夢だって話してるじゃん


なのに漫画原作をすすめるって、どういう事? カナミはユキのために小説を書いているわけじゃないんだからね!」


「ふぅん……」


ユキは興味なさそうに雑誌をカナミに突き返すと、自分の席に戻って行ったのだった。
< 29 / 143 >

この作品をシェア

pagetop