怨み赤子
ユキはその時、チラシ作りの費用を計算し始めたのだ。


学校内で配るものだし、印刷くらいは学校側がしてくれる。


「プロは8万円でこういう仕事を受けるらしいよ。じゃぁ、5万? 多いいかな? 3万?」


あたしはユキの言葉に唖然としてしまった。


ユキはチラシ作りのプロでもなんでもない。


時々デザインをお願いされて描いていることはあったらしいが、何万も取れるものが作れるとは思えない。


「去年、丸尾君にオシャレな缶バッヂが欲しいって言われて、あたしが作ってあげたんだけどその時は3万円だったよ」


ニコニコとほほ笑みながら当然のようにそう言うユキ。


素人がユキのデザインを見てプロの判断などできるはずがない。


それなのにユキは「お金もらったらもうプロだから」そう言い、ほほ笑むのだ。


何の賞もとっていないのに、よくそんなことが言えたものだと、思わず感心してしまう。


友達から何万もとっておいてなんとも感じないのだろうか。


それでも他に作ってくれる人がおらず、あたしはユキに2万円でチラシ作りを頼んだのだ。


周囲にばれれば絶対に反対される。


そう思い、ユキに頼んだことは特別仲のいい人以外には黙っていた。
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